起きていた問題
会社の業績は好調であったものの、社内に社長の親族はおらず後継者は不在の状況でした。社長の年齢が65歳を超えた状況で、事業承継は喫緊の課題となっていました。社長は従業員の中から人望の厚い社員を後継者に据えることを模索していましたが、当該社員への教育や、株式の承継方法、借入金に係る連帯保証の取扱いなど、どのように事業承継を進めるべきか思案していました。
コンサルタントの関わり方
事業承継プロセスをリード
コンサルタントはまず、社長と後継者候補の社員に対し個別に面談を重ね、各人の考えや事業承継に絡む意向、問題点等を個別に把握しました。社員後継者が事業承継に対し前向きに考えていることを確認した上で、次のステップとして社長と社員後継者、コンサルタントの3名が意見交換する場を設け、事業承継に向けての現況確認や課題等を共有しました。
コンサルタントは調整役あるいはコーディネーター役として、社長と社員後継者の事業承継に関する考え方の刷り合わせや種々の条件面の調整等が円滑に進むように臨機応変に対応しました。あわせて、各種課題に対する具体的な解決策の提案等も行いながら、事業承継が計画的かつ現実的に進められるよう環境を整備して行きました。
最大限に配慮をした点は、社長と社員後継者の2者だけでは、気遣いや遠慮、疑心暗鬼等から暗礁に乗り上げやすいセンシティブな話でも円滑に進むように橋渡し役に徹することでした。
コンサルタントは調整役あるいはコーディネーター役として、社長と社員後継者の事業承継に関する考え方の刷り合わせや種々の条件面の調整等が円滑に進むように臨機応変に対応しました。あわせて、各種課題に対する具体的な解決策の提案等も行いながら、事業承継が計画的かつ現実的に進められるよう環境を整備して行きました。
最大限に配慮をした点は、社長と社員後継者の2者だけでは、気遣いや遠慮、疑心暗鬼等から暗礁に乗り上げやすいセンシティブな話でも円滑に進むように橋渡し役に徹することでした。
解決方法
事業承継後の価値創造を社員後継者中心に立案
後継者候補である社員は、取引先や従業員からの人望も厚く、現場仕事に対する取組姿勢も丁寧で迅速、気配りにとんだ進め方に定評がありました。ただ、これまで経営者目線を持った仕事への取組みはしてこなかったため、将来の経営者として後継者教育が必要でした。現社長からの経営理念の承継を図りつつ、会社の財務内容や経営状態の現状把握を行った上で、後継者による承継後の新たな価値創造について次代の幹部候補と一緒に考えてもらいました。
加えて社員後継者による株式(議決権)の確保や連帯保証債務についても解決する必要がありました。
これらのことを織込んだ事業承継計画を策定し、具体的な実施プランを決めました。
加えて社員後継者による株式(議決権)の確保や連帯保証債務についても解決する必要がありました。
これらのことを織込んだ事業承継計画を策定し、具体的な実施プランを決めました。
解決 POINT 1
承継会社の現状把握と後継者教育
後継者候補である社員は、事業承継に前向きではあったものの、会社の財務内容や損益状況については、当然ながら一切知らされてはいませんでした。また社員後継者は、従業員としては優秀ではあるものの、経営者として最低限保持すべきマインドや考え方、知識等については不十分でした。
コンサルタントは、社長の了解を得たうえで、会社の決算書を社員後継者に見てもらい、自分が承継しようとしている会社の現状を数値面から把握してもらいました。あわせて次の切り口で数か月間に渡り後継者教育を実施しました。
<教育①知識面>決算書の見方や資金繰り管理、損益分岐点分析、金融機関取引の基本、労働法規や会社法務の基礎など、経営者が知っておくべき知識面の教育
<教育②戦略思考面>ゼロベース思考や仮説思考、成果をあげるため思考・行動特性、リーダーシップ概念など、経営者が保持すべき戦略的思考方法の教育
<教育③フレームワーク>SWOT分析や3C分析、4P分析など、事業の現状把握や戦略立案のためのフレームワークの活用
以上のような後継者教育を通し、社員後継者に、知識面や思考面の技量が上昇したことで、当初は漠然と抽象的にしか捉えられていなかった事業承継について、次期社長として経営を引き継ぐことの本当の意味が理解できるようになったようでした。社員後継者に事業承継に対する(=次期社長としての)決意・覚悟が確立できてきたことをコンサルタントも強く感じられるようになりました。
コンサルタントは、社長の了解を得たうえで、会社の決算書を社員後継者に見てもらい、自分が承継しようとしている会社の現状を数値面から把握してもらいました。あわせて次の切り口で数か月間に渡り後継者教育を実施しました。
<教育①知識面>決算書の見方や資金繰り管理、損益分岐点分析、金融機関取引の基本、労働法規や会社法務の基礎など、経営者が知っておくべき知識面の教育
<教育②戦略思考面>ゼロベース思考や仮説思考、成果をあげるため思考・行動特性、リーダーシップ概念など、経営者が保持すべき戦略的思考方法の教育
<教育③フレームワーク>SWOT分析や3C分析、4P分析など、事業の現状把握や戦略立案のためのフレームワークの活用
以上のような後継者教育を通し、社員後継者に、知識面や思考面の技量が上昇したことで、当初は漠然と抽象的にしか捉えられていなかった事業承継について、次期社長として経営を引き継ぐことの本当の意味が理解できるようになったようでした。社員後継者に事業承継に対する(=次期社長としての)決意・覚悟が確立できてきたことをコンサルタントも強く感じられるようになりました。
解決 POINT 2
後継者による議決権の確保と連帯保証債務への対応
承継会社の株主は社長であり、社長には娘が2名いました。娘2名とも承継会社とは無関係な専業主婦であり、事業承継には無関心でした。一方、承継会社の業績は好調であったため、株式価値を試算したところ、株価は1.5億円程度の価値があることが判明しました。社員後継者に1.5億円で承継会社の株式を買い取る財力は当然にありません。また社長についても、次期社長こそ社員後継者に譲りたいものの、将来的には娘の子供(孫)が事業を承継する可能性にも期待していました。
このためコンサルタントは、司法書士資格を持つ他の中小企業診断士に相談し、会社の経営権(議決権)のみを社員後継者に信託する特殊な民事信託を組成することを提案しました。この信託により、株式処分権や将来の経営権(議決権)は社長一族に残しつつ、社員後継者が経営者である期間だけ経営権(議決権)を付与することが可能となりました。
また会社には銀行からの借入金が2億円あり、すべて社長が連帯保証しています。社員後継者に事業承継すると、社員後継者に連帯保証の要請があることが想定されていました。そこでコンサルタントは「経営者保証に関するガイドライン」を社長に説明するとともに、承継会社で問題となりそうな点が「法人と個人の分離」である点を指摘しました。その上で、社長が会社に無償貸与していた本社不動産について適正賃料を設定するとともに、会社・社長間の金銭貸借についても一定のルールを設け金利の授受も開始しました。また社員後継者を取締役に加え、取締役会を毎月開催することとし、会社経営の透明性を高めました。この結果、メイン行からは業績面で著しい悪化がなければ、事業承継を機に連帯保証を解除する方向性で検討を進める見解を受けるに至りました。
このためコンサルタントは、司法書士資格を持つ他の中小企業診断士に相談し、会社の経営権(議決権)のみを社員後継者に信託する特殊な民事信託を組成することを提案しました。この信託により、株式処分権や将来の経営権(議決権)は社長一族に残しつつ、社員後継者が経営者である期間だけ経営権(議決権)を付与することが可能となりました。
また会社には銀行からの借入金が2億円あり、すべて社長が連帯保証しています。社員後継者に事業承継すると、社員後継者に連帯保証の要請があることが想定されていました。そこでコンサルタントは「経営者保証に関するガイドライン」を社長に説明するとともに、承継会社で問題となりそうな点が「法人と個人の分離」である点を指摘しました。その上で、社長が会社に無償貸与していた本社不動産について適正賃料を設定するとともに、会社・社長間の金銭貸借についても一定のルールを設け金利の授受も開始しました。また社員後継者を取締役に加え、取締役会を毎月開催することとし、会社経営の透明性を高めました。この結果、メイン行からは業績面で著しい悪化がなければ、事業承継を機に連帯保証を解除する方向性で検討を進める見解を受けるに至りました。
解決 POINT 3
後継者による価値創造と事業計画の策定
社長から社員後継者への経営理念の承継は概ね進んでいたものの、後継者による次代の価値創造が不十分だと感じられました。そこでコンサルタントは、社員後継者に対し、自身が社長に就任した後の幹部社員と目している従業員を数名選定することと、これまでの後継者教育で修得した知識や思考方法を活用して、選定メンバーと一緒に事業計画を策定することを提案しました。社長からも本提案について賛意を得たことから、社員後継者をリーダー、コンサルタントはアドバイザー、総勢5名で2カ月間のプロジェクトとして事業計画の策定を開始しました。
コンサルタントはこの事業計画の策定にあたり、事業承継に係る計画や行動計画も盛り込むことを提案しました。メンバー全員が2カ月間、精力的に取り組んだ結果、価値創造プランと具体的な事業承継プランの両方を盛り込んだ事業計画が完成しました。
コンサルタントはこの事業計画の策定にあたり、事業承継に係る計画や行動計画も盛り込むことを提案しました。メンバー全員が2カ月間、精力的に取り組んだ結果、価値創造プランと具体的な事業承継プランの両方を盛り込んだ事業計画が完成しました。
効果・成果
後継者の決意・覚悟の確立と承継後の価値創造イメージの具体化
今回の事業承継コンサルティングを通しての最大の効果・成果は、後継者の事業承継に対する(=次期社長としての)決意・覚悟を確立することができたことです。後継者の決意・覚悟という土壌をベースに、事業承継後にどのようにして承継会社が利益を獲得し続けてゆくのかといった価値創造イメージも具体化することができました。
社長と社員後継者から大変大きな感謝を受け、コンサルタントとしての契約期間終了後も、顧問税理士を弊職に変更していただき、今後の事業承継の成就と事業承継後の経営・財務にも深く関わってゆく予定です。
社長と社員後継者から大変大きな感謝を受け、コンサルタントとしての契約期間終了後も、顧問税理士を弊職に変更していただき、今後の事業承継の成就と事業承継後の経営・財務にも深く関わってゆく予定です。
事業承継の総合的コーディネートは中小企業診断士がベスト
事業承継コンサルティングは経営面や財務面、法務面など幅広い観点からのアプローチが必要であり、現社長や後継者と“人”として向き合う人間力も要求される難易度の高い仕事です。
中小企業診断士には、税理者や弁護士、司法書士、社会保険労務士、CDAなど他の資格を保有している方も多くおり、過去の経歴も様々です。専門領域が重ならないからこそ、中小企業診断士は他の資格専門家とは異なり、専門家同士で連携しながらコンサルティングを進めることができるのです。
事業承継は、幅広い知識や経験が求められ、一人の専門家だけでは対応しきれないこともしばしばです。事業承継を多面的に進めるには、中小企業診断士によるコンサルティングがベストです。
中小企業診断士には、税理者や弁護士、司法書士、社会保険労務士、CDAなど他の資格を保有している方も多くおり、過去の経歴も様々です。専門領域が重ならないからこそ、中小企業診断士は他の資格専門家とは異なり、専門家同士で連携しながらコンサルティングを進めることができるのです。
事業承継は、幅広い知識や経験が求められ、一人の専門家だけでは対応しきれないこともしばしばです。事業承継を多面的に進めるには、中小企業診断士によるコンサルティングがベストです。