起きていた問題
Z社は関西一円を営業範囲とする年商5億円の土木建築業です。同社は土木建築業として様々な取引先から民間工事を受注していました。
しかし、従前より受注は断らず、「どんぶり勘定」で商売を行っており、工事別損益を意識せずに経営を行ってきました。また、取引先に提出する「見積書」は社長が作成しており現場の管理者(幹部社員)が「原価」を知らないことから、現場は忙しいけれど、儲かっていない状況が続いていました。
しかし、従前より受注は断らず、「どんぶり勘定」で商売を行っており、工事別損益を意識せずに経営を行ってきました。また、取引先に提出する「見積書」は社長が作成しており現場の管理者(幹部社員)が「原価」を知らないことから、現場は忙しいけれど、儲かっていない状況が続いていました。
コンサルタントの関わり方
工事別原価管理手法の導入、幹部会議の側面支援を実施
・中小企業診断士が実行予算書、見積書、工事進捗管理表、工事管理台帳の導入支援を実施
・原価管理手法を幹部社員に定着化させることで、自らチェックと改善を行う体制を構築
・PDCAサイクルの定着化
・原価管理手法を幹部社員に定着化させることで、自らチェックと改善を行う体制を構築
・PDCAサイクルの定着化
解決方法
工事損益の明確化と幹部社員を巻き込んだ改善
工事損益を明確にするために、原価管理プロセスとして、実行予算書の作成、実行予算書に基づく見積書の作成、工事進捗管理表・工事管理台帳の作成を開始しました。作成するだけでは効果は薄く、幹部社員を巻き込んだ幹部会議を実施することで、価格決定プロセスを透明化するとともに、幹部社員の原価意識・原価低減意欲を醸成しました。
その結果、工事別の損益が改善するとともに、取引先の見直しによる企業の利益構造も変革することができました。
その結果、工事別の損益が改善するとともに、取引先の見直しによる企業の利益構造も変革することができました。
解決 POINT 1
原価管理プロセスの導入
同社は500万円以上の受注については、見積書作成の根拠となる実行予算書を立てることからスタートしました。実行予算書を作成することで、根拠に基づいた見積書を取引先に提示するようになりました。また、工期が2ヶ月以上に及ぶ場合には、工期中に工事進捗管理表を作成し、材料発注、工期管理、投入労働量などの確認を行い、現在の工事進捗状況を把握しました。工事完了後には、幹部社員自らが、入金確認、請求書類の仕訳や集計作業を行い、工事ごとの原価を洗い出し、工事別損益状況を明らかにしました(工事台帳の作成)。また、同時に工事台帳と実行予算書・見積書との差額(予算差異)を把握し、今後の同種工事の実行予算書の見直しに活用しました。
このような原価管理プロセスを導入することで、毎月の損益状況と照らし合わせ、同社における課題を透明化していきました。
このような原価管理プロセスを導入することで、毎月の損益状況と照らし合わせ、同社における課題を透明化していきました。
解決 POINT 2
幹部社員の原価低減意識の醸成
原価管理プロセスは資料を作成するだけでは得られる効果は薄いため、幹部社員参加型の幹部会議を実施しました。幹部会議を進める中で、幹部社員の原価意識が低いことが分かったため、まずは原価知識を共有しました。直接人件費・材料費・外注費のみならず、現場では見えづらい直接費(燃料費や交通費、設計代など)、工程変更や工期遅延による実行予算書外の支出、現場以外の間接人件費、現場ごとに求められる利益水準などを中心にチェックを行い、次の改善に繋げるアクション(改善活動)を共有することで、社長を含む幹部社員は原価低減意欲を持つようになりました。
また幹部会議を通じて、実行予算書の精度(工期、安全基準を守った適切な要員計画、余剰のない材料発注)を向上することも同時にできました。
また幹部会議を通じて、実行予算書の精度(工期、安全基準を守った適切な要員計画、余剰のない材料発注)を向上することも同時にできました。
解決 POINT 3
高採算工事、工種、取引先の特定と利益管理、営業強化
原価管理プロセスを導入し、幹部会議を実施することで、同社の得意な工種や高採算の取引先、不得手な工種や低採算・赤字の取引先などを整理する事ができました。
その結果、不得手な工種は工期が当初予定よりも遅延することから、現場が長引き、他の工事にも支障を与え、忙しくなっていることが分かりました。そのため、不得手な工事については、社長が受注を断ったり、懇意にしている外注先への依頼などを行い、現場の稼働を落としました。
低採算・赤字の取引先については、社長が根拠のない値決めを行っていたり、価格交渉を行っていないことが分かりました。実行予算書の精度が向上したことから、社長は根拠に基づいた価格交渉を行うことができました。その結果、低採算・赤字工事は減少し、利益改善を果たしました。
また、高採算工事・工種や取引先については取引先と懇意にしている幹部社員や社長が営業活動の頻度を上げたため、受注量が増加し、同じ稼働状況でも利益額が増加しました。そのため、しばらく中止していた新しい人材も採用する事ができました。
このようにして、社長を含む幹部社員自らが、同社の利益構造を変革させることができました。
その結果、不得手な工種は工期が当初予定よりも遅延することから、現場が長引き、他の工事にも支障を与え、忙しくなっていることが分かりました。そのため、不得手な工事については、社長が受注を断ったり、懇意にしている外注先への依頼などを行い、現場の稼働を落としました。
低採算・赤字の取引先については、社長が根拠のない値決めを行っていたり、価格交渉を行っていないことが分かりました。実行予算書の精度が向上したことから、社長は根拠に基づいた価格交渉を行うことができました。その結果、低採算・赤字工事は減少し、利益改善を果たしました。
また、高採算工事・工種や取引先については取引先と懇意にしている幹部社員や社長が営業活動の頻度を上げたため、受注量が増加し、同じ稼働状況でも利益額が増加しました。そのため、しばらく中止していた新しい人材も採用する事ができました。
このようにして、社長を含む幹部社員自らが、同社の利益構造を変革させることができました。
効果・成果
原価管理は作成して満足するだけではなく、活用することが重要です。
幹部社員は幹部会議を通じて自らが気づき、改善に取り組んだ結果、利益構造も変革しました。
結果的に、現場の繁忙は落ち着き、利益率は7%改善しました。
幹部社員は幹部会議を通じて自らが気づき、改善に取り組んだ結果、利益構造も変革しました。
結果的に、現場の繁忙は落ち着き、利益率は7%改善しました。
改善の“芽”は自社にあり
社長や幹部社員には、自社の振り返りや管理面を億劫に感じられる方が多いと思います。また何から手を付けて良いか分からず、スタートすることもできない方も多いと思います。
今回のケースでは、中小企業診断士が側面支援を行うことで、スタートすることができました。また、幹部社員参加型のプロジェクトを進行させたことで、PDCAサイクルが自社のものになり、社長含む幹部社員自らが改善していこうという意欲を引き出したことが成功の秘訣となりました。
「改善の“芽”は自社にあり」です。何らかの改善は必要だと思っているものの、進め方が分からずスタートできない方は、中小企業診断士会にご相談してみては如何でしょうか。
今回のケースでは、中小企業診断士が側面支援を行うことで、スタートすることができました。また、幹部社員参加型のプロジェクトを進行させたことで、PDCAサイクルが自社のものになり、社長含む幹部社員自らが改善していこうという意欲を引き出したことが成功の秘訣となりました。
「改善の“芽”は自社にあり」です。何らかの改善は必要だと思っているものの、進め方が分からずスタートできない方は、中小企業診断士会にご相談してみては如何でしょうか。