経営コラム

現代の最先端「ウルトラパーソナライズマーケティング」 

「パーソナライズマーケティング」とは

皆さんは、アマゾンや楽天で買い物をされたことはありませんか?そしてそのとき、おすすめ商品を提示されませんでしたか?
たとえば、本を買った場合、「この本を買った人はほかにこんな本もチェックしています」とか、「よく一緒に購入される商品」、「この商品を見たあとに買っている商品」、「あなたへのおすすめ商品」などが画面表示されると思います。

また、GoogleやYahoo!で、特定のキーワードを検索した場合、そのキーワードに関連する商品の広告(「パーソナライズ広告」)が、頻繁に出現するようになったりしませんでしたか?
その他、ネット通販で買い物をしたときには、定期的にフォローのメールが届き、1週間後、2週間後、1か月後と、そのときの状況に応じた内容の情報が送られてきたのではないかと思います。
これらがデジタルテクノロジーを活用した「パーソナライズマーケティング」の代表的な例です。過去の購買履歴やネット検索履歴、属性など大量のお客様情報を処理・活用して、お客様ひとりひとりに、適切な商品やサービスを、適切なタイミングで提供し、お客様満足度や企業ロイヤルティの向上につなげようとしているのです。
最近では、このテクノロジーを低コストで利用できるサービスも出現しており、今後は中小企業でも「パーソナライズマーケティング」が普及していくと思われます。
ただし、「パーソナライズマーケティング」にも課題があります。お客様の情報に変化があれば、適切な商品やサービスを提供することができなくなります。また、競合他社も同様の「パーソナライズマーケティング」を実施した場合、差別化が難しくなります。
この課題を解決するのが、次にご説明する「ウルトラパーソナライズマーケティング(筆者の造語)」です。

「ウルトラパーソナライズマーケティング」とは

デジタルテクノロジーを活用して「パーソナライズマーケティング」を実施した上で、人間の想像力により、お客様ひとりひとりにとって“より最適な商品やサービスを最適なタイミングで提供する”ことです。
単なる「パーソナライズマーケティング」の“延長”ではなく、「パーソナライズマーケティング」の“究極の発展形”という意味で、「ウルトラパーソナライズマーケティング」と名付けています。

① コンタクトセンターにおける「カスタマーメール」
「ウルトラパーソナライズマーケティング」の事例として、ネット通販のコンタクトセンター(問合せ窓口)業務を代行するA社(筆者の広報支援先)の「カスタマーメール」をご紹介します。
コンタクトセンターでは、お客様から主にメールで問い合わせを受け、メールで回答しています。スタッフは、デジタルテクノロジーにより、お客様の購買履歴や属性などの情報をPC画面上に呼び出すとともに、過去の同様の問い合わせとそれに対する回答を検索して探し出します。その上で、それらの情報を参照しながら、そのお客様ひとりひとりにとって適切な回答を、適切なタイミングで、提供するようにしています。ここまでは「パーソナライズマーケティング」であり、競合他社も行っています。
ただ、適切な回答をするだけでは事務的な「ビジネスメール」になってしまうおそれがあり、的確な業務処理という点では合格かもしれませんが、顧客ひとりひとりの満足度や商品・企業へのロイヤルティを向上するという本来の目的を考えると決して十分とは言えません。
A社では、お客様への回答メールを作成するときに、「会話の設計」という手順を導入しています。紙幅の関係ですべてを紹介することはできませんが、その中で最も大切なステップが「お客様からのメールの『読み取り』です。『読み取り』とは、「お客様がどんな人で、何を求めていて、なぜ問合せをされたのか(動機と感情)」を、「お問合せ文章に記された言葉を表面的に拾うのではなく、具体的に解釈する」「お客様の感情や置かれている状況を想像する」ことで、特定することです。
この『読み取り』を出発点にして、読み取ったお客様のニーズ・感情に応じる「応え」を決め、情報を整理し、文章化し、編集し、再考して、メールを完成させます。
『読み取り』は、今のところ、まだデジタルテクノロジーではできません。デジタルテクノロジーは「お問合せ文章に記された言葉を表面的に拾ってそのままの意味に解釈する」ことは得意ですが、「お客様の感情や置かれている状況を想像する」ことは苦手なのです。
この結果、スタッフから、「そのお客さまだけに宛てたパーソナルな表現を書くということに取り組んでみたところ、お客様から喜びの声が届くようになった」といった報告があがるようになってきました。
これが、デジタルを利用して人間が実現する「ウルトラパーソナライズマーケティング」の成功事例です。

(情報工房2021出版プロジェクト著「先輩のメールはなぜお客様の心をつかむのか」2022年1月より)

②広報活動における「担当者ストーカーPR」
もう一つの事例は、私自身の「担当者ストーカーPR」です。
私は、企業の広報代行として、商品のプレスリリースを書き、マスコミに売り込み、番組や記事の中で取り上げてもらう活動をしています。“商品情報”をマスコミに売り込むBtoBマーケティングです。「担当者ストーカーPR」はその手法のひとつです。手順は次の通りです。
1.図書館のパソコンに入っている「新聞記事検索システム」で、商品や業界に関する記事を抽出し、新聞社に電話して記事を書いた記者を特定し、記事内容からその記者が求めている情報を想像する
2.その記者に送る「お手紙プレスリリース」を作成する。冒頭で、記事に対する個人的な意見や感想(ポジティブなもの)、そして記事に対する感謝を伝えた上で、その記者が求めていると思われる“世の中の役に立つ商品情報”を伝える
3.「お手紙プレスリリース」を万年筆の手書きで書き、個人から個人への手紙のようにして送る
この結果、プレスリリースが記者に取り上げられる確率は向上し、これをきっかけに、記者との信頼関係を構築でき、継続的なメディア露出につながっています。
この事例では、新聞記事を特定するためにデジタルテクノロジーを使用し、その後は、記者ひとりひとりに最適な情報を想像し、最適なタイミングで提供しています。ポイントは“人間の想像力”です。

(筆者著「広告費ゼロ!プレスリリースを活用して勝手に売れていく必勝方程式」2021年10月より)

「ウルトラパーソナライズマーケティング」の真髄

 まず、デジタルテクノロジーでお客様の情報を効率的に入手します。その上で、ひとりの人間として、ひとりの人間であるお客様と真剣に向き合い、もしかしたらお客様ご自身もわかっていない、お客様が求めているものを想像し、それを最適なタイミングで提供することです。テクノロジーと人間との協働、これが最先端の「ウルトラパーソナライズマーケティング」なのです。(マーケティングの神様・フィリップ・コトラーの最新刊『コトラーのマーケティング5.0』を参考にしました)

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