経営コラム

従業員が主体性を持って動き出す!ワークショップ型研修

はじめに

企業が置かれている環境は年々変化の速度が増しており、変化に柔軟に対応し周囲の人を巻き込みながら新しい商品やサービスを生み出す力が必要になってきています。このような時代にマッチした人材育成や研修方法とはどのようなものでしょうか。

このコラムでは、人材育成においてワークショップ型研修が必要とされる背景や、効果的な導入のために必要なポイントについてご紹介いたします。

本コラムの要点は下記のとおりです。
1.企業研修の現状とこれから求められる研修
2.セミナーとワークショップの違い
3.教育現場でも注目されるアクティブ・ラーニングという考え方
4.成果が出るワークショップのためのポイント

1.企業研修の現状とこれから求められる研修
はじめに、研修にかける費用について近年の企業の状況を見てみましょう。
図1図2は東京商工会議所が研修講座利用企業からアンケート調査を行ったものです。

図1 2020 年度研修費用(2019 年度比)・2021 年度研修費用(2020 年度比) 

図2 2022年度研修費用(2021 年度比)

東京商工会議所 従業員研修の実施状況に関するアンケート結果 より
https://www.tokyo-cci.or.jp/file.jsp?id=1029311

コロナの影響が出始めた2020年度で研修費が減少した企業が34%と多かったものの、2021年度では増加が38%と、減少した企業の9%を大きく上回っています。さらに、2022年度の研修費用予定においても増加予定が26%、減少予定が7%と、経済状況の先行きが不透明な中で人材育成への投資を続けたいという姿勢がうかがえます。

ではこれらの企業は研修のどのような分野に投資すべきと考えているのでしょうか。

図3.2022年度以降、注力したいと考えている研修テーマはありますか

2022年度 教育研修の実態と課題に関するアンケート ㈱ジェイテック調べ
https://www.hr-doctor.com/dlcontents/dl/management_hrdevplan2022.pdf

図3は株式会社ジェイテックが教育研修について企業の人事責任者・担当者にアンケート調査を行ったものです。2022年度以降、注力したいと考えている研修テーマとして「リーダーシップ、主体性向上」「次世代リーダー育成」「コミュニケーション力・プレゼンテーション力向上」が上位にきています。リーダーシップや主体性については、スキルも必要ながらマインド面での改革や自分の在り方について考えることが必要なテーマといえるでしょう。また、コミュニケーションについては自分だけでなくチームや組織での関係性や環境構築が重要となるテーマです。

セミナーとワークショップの違い

ここで、研修の型ごとの特徴を整理してみましょう。人材育成のために行われる研修は大きく「セミナー型」「ワークショップ型」の2つに分けられます。

セミナーは新しい知識や決まった手法があるものについて、その方法を熟知している講師が多くの受講者に対して知識を教授する形で行われます。
一方のワークショップは、決まった1つの正解がない課題の解決策について探求したり、これまでにないまったく新しいものを創り出したいとき、などに用いられます。受講者は複数人のグループとなり、コミュニケーションをとりながら自分自身やグループメンバーの考えや経験、アイデアをもとに思考を深め、新しいものを創造したり身に着けたりしていきます。講師は教える立場というよりも、新たなものを生み出すための促進者(ファシリテーター)として支援します。


また、一般的な学習モデルとその学習内容の定着効果を表したラーニングピラミッド(図4)と照らし合わせてみると、ワークショップでは学習定着率が高いとされる方法を含むことがわかります。

図4.ラーニングピラミッド (アメリカ国立訓練研究所の「平均学習定着率調査」をもとに作成)

さて、1で挙げられていた「リーダーシップ、主体性向上」「次世代リーダー育成」「コミュニケーション力・プレゼンテーション力向上」については、どちらの研修型が適しているでしょうか。いずれも個人の範疇で収まるものではなく、部下やチームメンバー、組織や取引先といった“相手”との関係性が重要となってくるものですね。このような相手との関係性や人や組織によって柔軟な対応が求められるテーマの研修においては、基礎知識を得るためのセミナー型と、自分自身や所属するメンバーと一緒に対話しながら深い学びを得られるワークショップ型研修を組み合わせることで、より効果を発揮することができるでしょう。

教育現場でも注目されるアクティブ・ラーニングという考え方

 実は近年、義務教育や高等教育の現場でもアクティブ・ラーニングの考え方が取り入れられています。
 より不確実性が高まる社会に対応していくためには、与えられた“正解”を暗記するだけでなく、対話により発見する力や発想する力といった「生きる力」をはぐくむことが必要で「どのように学ぶか」が重視されているのです。実際の授業でも生徒がより自主的に考え、いろんな意見を踏まえた上で自分自身の考えがどう変わったか、また課題を解決するためにどんな方法があるか、などを検討するワークショップ型授業も取り入れられています。

図5. 文部科学省 学習指導要領 ポイントがわかるリーフレットより抜粋

https://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2019/02/14/1413516_001_1.pdf

また、大学の講義方法の違いによる検証では、アクティブ・ラーニングを取り入れた授業では、講義中心の授業に比べて「授業が楽しみと回答する度合」、「授業外学習への意欲」、「論述問題での成績」が高まるといった結果がでています(「アクティブラーニングの学習効果に関する検証」 杉山 成氏,辻 義人氏 より)。
仲間との対話やワークを通して自らの考えを相対的に捉える訓練をすることで、学習対象への興味が深まり、自ら学習する主体性や、得た知識の柔軟な活用度合いが高まることにつながるといえるでしょう。

成果が出るワークショップのためのポイント

このように企業だけでなく子供の教育現場でも積極的に取り入れられてきているワークショップですが、成果をあげるために押さえておきたいポイントがあります。
(1) 目的を明確にする
企業や組織にとって解決したい課題は何か、そのために誰に何について考えてもらい、どのように変化してもらいたいのか、について明確にしましょう。
(2) 自分事となるテーマ設定と興味を生む問いかけを行う
企業が解決したい課題を従業員自身が自分事として考え、固定観念の枠に囚われずに自由に発想を膨らませるためには、思わず解いてみたくなるような問いかけの設定と、思考のステップを複数段階に分けることが有効です。例えば、“部門長がリーダーとして必要なスキルと取り組みを考える”というテーマ設定においては以下のような問いかけを順番に行うことが考えられます。
・1年後、チームリーダーとして最高に嬉しい成果を出している状態とは?
・その状態を100点とすると、今の自分の仕事は何点か?
・差分の〇点は何が足りないか?
・それを埋めるために必要なものやできることはなにか?
(3) 心理的安全性を確保する
対話や創造活動に積極的に関与するためには、心理的安全性を確保することが大切です。“批判しない”ルールの設定や、はじめに1人ずつ付箋に意見を書いてから発表するなど、全員の意見に耳を傾けられ、立場が異なる中でも関与がしやすくなる工夫を組み入れましょう。もし、参加するメンバー間に決定的に関係性が悪化している方がいる場合は、(解決したい課題にもよりますが)無理に対話させようとせずグループを分けるなどの配慮を行うのがよいでしょう。
(4) 変わっていくプロセスを楽しむ
入念に準備して進めても、ワークショップのアウトプットやアイデアはフタを開けてみないとわからないものです。アウトプットのよしあしに拘り過ぎず、ワークや対話等のプロセスの中で生まれる従業員やチームの変化に着目し、新たに生まれる可能性を楽しんでもらいましょう。

さいごに

 社内でワークショップの設計を行うのは専門部署をかかえる大企業でないとなかなか難しいものです。また自社の課題を客観的に見つめるためにも第三者からの見方を参考にされることもよいでしょう。様々な研修講師の経験を持つ中小企業診断士への相談も選択肢の1つとしてご検討ください。
ワークショップ型研修を上手に活用し、従業員の皆さまが主体性を持って動き出す企業づくりをぜひ推進していってください。

実績については下記をご参照ください

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