経営コラム

企業価値を高めるSDGs!その取り組み方法とは?

■はじめに
今やテレビや新聞で見ない日はないSDGs。17のカラフルなゴールアイコンは既に多くの方が見られたことがあるのではないでしょうか。しかし、
「そもそもSDGsってうちに関係あるの?」
「SDGsは気になるけど、どう取り組めばいいのか?」
といった声もたくさん聞きます。

本質をしっかりと理解し取り組めば、実は人材育成や組織力の向上、新たなマーケットの拡大など、企業価値の向上にもつなげていくことができます。

既にSDGsに取り組んでいる企業も、そうでないところも、ぜひ今一度SDGsというものを知り、自社の組織力強化のためにもぜひ今より一歩進める方法を学びましょう。

1.SDGsとは~本質的な意味を知る~
2.「SDGsに取り組む」のではなく、「社会課題に取り組む」
3.具体的に進める時の3つのポイントと発信方法

SDGsとは~本質的な意味を知る~

SDGsとはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称で、2015年、国連加盟国193カ国全会一致で採択された2030年までに達成すべき目標です。

17のゴールは以下のような項目があります。

SDGsというと、CO2の削減やごみ問題、マイクロプラスチックなど、環境問題に目が行きがちです。しかし、人に関すること、経済に関することなど、幅広い分野にわたります。
17のゴールすべてに共通しているのは「今世界で取り組むべき社会課題」ということです。

この17のゴールが明記されている採択文書は
「Transforming our world: the 2030 Agenda for Sustainable Development(我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ)」というタイトルで、30ページ以上にわたる文書です。よく語られる大事なキーワードとして「誰一人取り残さない」というものがあります。もちろんこれも大切なのですが、さらに見ていくと、最後に「2030 年までに、より良い世界へと変えるため、本アジェンダを十分活用し、 達成するための揺るぎないコミットメントを、我々は改めて確認する。」と締めくくられています。

つまり、私たちの目的は「より良い世界へ変える」「持続可能な世界のために変革する」ことと捉えられます。

SDGsに取り組むということは、SDGs宣言をすることやバリューチェーンマッピング※をきれいに作ること自体が目的ではありません。よりよい世界、社会のために社会課題に取り組んでいくことが本来の目的なのです。
※バリューチェーンマッピングとは:企業が行う事業活動を、商流全体を通した価値創造のため一連の流れと捉えるバリューチェーンの考え方をベースに、SDGsのゴールと結びつけて取り組みの優先順位を検討する手法

「SDGsに取り組む」のではなく、「社会課題に取り組む」

では、実際にどのように社会課題に取り組んでいけばいいのでしょうか。

SDGsの導入方法として「SDGコンパス」が有名です(https://sdgcompass.org/wp-content/uploads/2016/04/SDG_Compass_Japanese.pdf)。この中には「バリューチェーンマッピング」や「ロジックモデル」など難しい言葉が多く、とっつきにくい所があります。実はこのような導入方法やツールにこだわる必要はありません。

前述したように、一番大切なことは「世の中をよりよくすること」です。進めるにあたって難しいな、と感じた時は、「SDGsに取り組む」のではなく、「社会課題に取り組む」と置き換えましょう。

企業としてどんな社会課題に取り組むかを考える際には、例えば業界ならではの問題(職人が育たない、介護人材の不足、環境負荷が高い、など)や、地域社会が抱える問題(買い物難民、空き家問題、林業の維持など)から検討してみます。社内の課題=社会課題につながることもありますが、より広い視点で俯瞰してみることが大切です。

また、事業活動に全く関係がなくても、「私は釣りが好きだから海の汚染を何とかしたい」「子どもや孫のことを考えると教育問題で何かできないかな」というように、個人的な興味から考えてみることもいいでしょう。事業活動から考えたときは当たり前の課題にしか行きつかなかったことも、関係ないと思われる社会課題から考えることで、新たな課題に気づくことがあるからです。

このように社会課題から考える方法をアウトサイドインといいます。従来の新商品・新サービス開発の手法として、自社の技術力や想いから開発を進めるプロダクトアウトや、市場・顧客のニーズから開発を進めるマーケットインがあります。アウトサイドインはそれらよりもっと外側にある解決したい社会課題から逆に考えることで、自社の思いつく延長線上にはない、イノベーティブな商品開発につなげることが可能になります。その商品(サービス)が市場に出回ることで社会課題の解決につながるので社会価値の向上につながり、今までにない目新しい付加価値の高い商品(サービス)となれば、企業価値の向上にもつながります。

具体的に進める時の3つのポイントと発信方法

SDGsを進める=社会課題に取り組むために、どのようなことに気を付ければいいでしょうか。3つのポイントがあるので見ていきましょう。

①全社で取り組む
社内でSDGs推進チームを組まれたり、経営企画部が中心となって進めることが多いです。一方で、その一部のメンバーだけが学習を進め、自社での取り組みを決めてしまっている企業もありますが、とてももったいないです。SDGsは本業と別のところで動かすものではなく、自社の改善活動や人材育成、新商品開発などと一緒に取り組むことができます。むしろ、その要素を入れていかないと、長続きする活動にはなりません。

従って、どういったことに優先的に取り組むか、どのようなペースで進めるか、などはコアメンバーが主導する形を取ったとしても、SDGsの重要性を学ぶ研修や勉強会は全社で行ったり、改善活動とどう結びつけられるかを考える時は各部署の意見を吸い上げたりするなど、全社的に取り組んでいくことが重要です。コアメンバーだけで進めて知らない間に自分の会社がSDGs宣言を出していた、と言ったことがあれば、「また一部の人が何か始めたんだな」と他人事に終わってしまいます。ぜひ全社の巻き込みを意識して進めましょう。

②連携する

取り組みの際に、自社以外と連携できることはないかを考えます。
例えば、CO2削減や廃棄物からの新商品開発であれば、上流である仕入先や原料調達先、下流にあたる取引先や顧客、エンドユーザーなどと協力し合えないか考えます。また、地域課題に関する要素が強いものであれば、自治体やコミュニティ、学校や地域の子ども、大学生なども巻き込んでいく、などです。

自社のサプライチェーンを巻き込む時には、バリューチェーンマッピングと言われるものも有益ですが、いざ取り組もうとするとハードルが高く一歩が踏み出しにくくなることがあります。形式にこだわらず、まず自社でしていることを誰かと一緒にできないか、またやってみたいけれど自社だけでは難しそう、といった取り組みに他社に声をかけて協働でできないか、といった視点で考えます。

SDGsのゴール17の「パートナーシップで目標を達成しよう」はどの取り組みにも必要な視点です。自社だけでできることは限られていますので、ぜひ手を取り合って取り組みを進めてみましょう。

③逆算する

課題や目標を設定する時に、未来のありたい姿を設定し、それを達成するにはいつまでに何を取り組んでいけばいいかを逆算する考え方です。対照になる言葉にフォアキャスティングがあります。これは、今の延長線上でできることを考えていくので、スモールステップを積み重ねるという意味では大切なのですが、より大きな目標を達成したい場合にはバックキャスティングが必要になります。

■事例
この3つの観点で企業価値を高めている事例をご紹介します。お子さんが小さい方はよくご存知のアンパンマンカレー。実はお茶漬けで有名な永谷園が作っています。子ども用として売り出したアンパンマンカレーを、ある時期からアレルギー対応食として販売しました。子どもは離乳食を開始して少し経った1歳くらいからより多くの食材を口にするようになります。その頃にアレルギーが増えることに着目し、それなら低年齢対象のカレーをアレルギーのことを気にしなくていい材料にしよう、と切り替えたそうです。今では、子どものカレーデビュー=アンパンマンカレーというほどの知名度になり、アレルギーを持つ持たないに関わらず、子育て中の多くの家庭に支持される商品となっています。

また現在、食物アレルギー配慮商品を展開している飲食メーカー5社(オタフクソース㈱、ケンミン食品㈱、㈱永谷園、ハウス食品㈱、日本ハム㈱)が協同し、プロジェクトAとして食物アレルギー対応メニューの開発や小学校へのオンライン出前授業などを実施しています(https://www.otafuku.co.jp/product/otafuku_allergy/pja/)。自社だけではなく、企業同士が連携したり、地域の小学校などとの連携をすることで、より活動の幅が広がっています。

このように、「全社で取り組む」「連携する」「逆算する」という視点で実践することで、自社の一部分でやっていては実現できない企業価値の向上につながり、SDGsが事業に欠かせないものになることがわかるでしょう。

■どう発信すればいいか

SDGsの取り組みが分かるよう、パンフレットにまとめたり、WEBサイトでSDGsの専用ページを作ったり、といったことももちろん有益です。ただ、そこをきれいに作り込むことが目的化しては意味がありません。

一番簡単でステイクホルダーにもわかりやすいのは、SNSやブログでの発信です。時間やコストをかけられない、ハードルが高い、という場合には、今あるツールやお金を掛けずにすぐに始められる方法をオススメします。

きれいなSDGs宣言を作ってからWEBサイトに載せるのではなく、取り組んでいる現在進行形のありのままの姿を発信していってかまいません。SDGsは社会課題への取り組みなので、これをしたら終わり、というゴールがありません。常に何らかの取り組みを続けていくことになるはずです。「パンフレットが完成したので終了」「きれいなWEBサイトができたから完了」というのでは、厳しくなっている顧客や取引先の目からは、SDGsウォッシュ(見せかけの取り組み)と思われることがあるかも知れません。

ではどんなことを発信すればいいのか。決まったものはありませんが、私がいつもお伝えするのは、「ありのままを発信する」ということです。みんなで課題出しのワークをしている様子もいいでしょうし、SDGsって難しい!っていう率直な感想、新たな取り組みに難航している、といった一見するとマイナスと捉えがちなことでも気にすることはありません。むしろきれいに作り込まれて実態が伴っているかわかりにくいものより、実践的な様子が見えるのでいいのではないでしょうか。

引用元:㈱ともに経営研究所Facebookページより

上記写真は、筆者のSNSで掲載した例になりますが、自社のSNSでもこのように取り組み過程を積極的に発信されるといいでしょう。こちらの大庫洋紙さまは、SDGs(=社会課題)に取り組んでいくことを、既存のQC活動に絡め全社で取り組むことで、組織力や企業価値が向上しています。

いかがでしたでしょうか。「全社で取り組む」「連携する」「逆算する」の3つのポイントを踏まえてさらに活動を前に進めると、より取り組みやすく成果が実感できるはずです。SDGsは関係ないと思われていた方、既に取り組まれている企業も、社会をよくする活動をしながら、企業価値も高めていきませんか。

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