今からはじめるインバウンド需要の取り込み
はじめに
観光業界は旅行業を中心に、運輸業、宿泊業、飲食業など、幅広い産業に関連する非常に裾野の広い総合産業といわれています。そのため、他の産業への需要創出効果や雇用創出効果など、経済波及効果も非常に大きく、21世紀のリーディング産業として大いに期待されているのです。
2019年、訪日外国人数は3,188万人に達しました。2020年~2022年、観光業界はコロナの影響でかつて無い大きなダメージを受けましたが、2023年はコロナ前の約8割まで回復し2,507万人に達しました。そして、2024年は過去最高の3,310万人に達する見通しです。
これからも訪日外国人数は増加していくの?
訪日外国人の出国地域における「豊かさ(1人当たりGDP)」×「近さ(訪日の容易さ)」×「人口(母数、人口ボーナス期)」の3つの構成要素からも、日本のインバウンド市場は構造的に拡大していくと言われています。
コロナのような不可抗力の事象が発生しない限り、特にアジア圏からの訪日外国人数は増加の一途をたどると思われます。この10年を振り返ってみても、日本を取り巻く近隣諸国(特にアジア圏)の経済成長率には目を見張るものがあります。
こうした状況を鑑み、政府は “オーバーツーリズム” の未然防止・抑制に向けた取り組みを総合的に支援する方針を示しました。
どうして “ゴールデンルート” ばかり観光するの?
一概には言えないと思いますが、アジア圏からの訪日外国人は、観光・レジャーに対する消費行動が成熟していないことが理由の一つと言われています。
急に豊かになって、どこへ行って、何を消費し、どう楽しめば良いのか分からない、「とりあえず、大手旅行会社のツアーにでも参加してみようか!」といったところでしょうか。
かつて、日本人もバブルの頃、同じ経験をしました。「初めてのヨーロッパは “ロンパリローマ” よね♬」と言って、大手旅行会社のツアー(ロンドン・パリ・ローマの3都市を1日半ずつ滞在し周遊する)に参加し、ヨーロッパ観光の雰囲気を満喫していました。
HERMESのスカーフを何十枚も購入し歓喜していた、当時の日本人観光客の消費行動を思い返してみると、訪日外国人が “爆買い” するのも分からなくもないですね。
ちなみに、大手旅行会社に勤める知人に「なぜ “ゴールデンルート” ばかり企画・販売するのか?」と訊ねてみたところ、その回答は「こちらの方が良く売れるから」と単純明快でした。今のところ、この業界では売り手と買い手の思惑が上手くマッチしているようですね。
※ゴールデンルート:外国人観光客が東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪などを巡る広域の観光周遊ルートのこと。
株式会社trendPlus 作成
どうして “爆買い” するの?
ここで、改めて「観光」の定義について調べてみました。広辞苑では「人々が気晴らしや休息ならびに見聞を広めるために、日常生活では体験不可能な文化や自然に接する余暇行動である」と記載されています。
先程の “爆買い” の話に戻りますが、訪日外国人が日本の百貨店、スーパー、ドラックストア等で購入していく商品は、医薬品(風邪薬、目薬など)、美容化粧品(化粧水、美容パックなど)、衛生用品、お菓子類など、私たち日本人が日常生活で良く利用する商品ばかりです。
私たちにとって日常普通に購入出来る商品を “爆買い” する消費行動が不思議に映ってしまいますが、良く考えてみると、訪日外国人にとっては日常生活では体験不可能な商品(安価でしかも容易に入手出来ない商品)と接する貴重な機会なのですね。
従って、これからインバウンド需要を取り込んでいこうと考えるのでしたら「非日常を体験してもらう機会を提供していく」というのが方向性のようです。
では訪日外国人の「非日常」って、どのようなモノやサービスの提供を指すのでしょうか?
それを考える際の着目すべきポイントは、訪日外国人の「日常」を良く知っておくことに他なりません。なぜなら「日常」を熟知していればこそ、「非日常」のモノやサービスを開発し提供出来るからです。
最後に
バブル崩壊後、失われた30年の間に日本人の価値観も多様化し、それに伴って消費行動も随分と変化し、成熟してきたように思います。
観光業界においても、かつては大手旅行会社が主役でしたが、格安個人旅行会社が台頭してきました。
これからアジア圏内において、現地の格安個人旅行会社が台頭してくるようになれば、訪日外国人の消費行動も成熟期に入ったと言えるでしょう。
その頃には、 “ゴールデンルート” “爆買い” “オーバーツーリズム” は影を潜め、多様な観光コース(魅力ある日本の地方文化を発見することに価値を見出すような)が次々に生まれ、日本列島の隅々で旅する外国人と出逢うのが「日常」になっているかも知れませんね。
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