経営コラム

医療業界注目のベースアップ評価料とは?概要や効果を分かりやすく解説

医療機関専門の経営コンサルタントとして、採用定着や経営効率化、働きがいのある職場づくりを支援しています中小企業診断士の矢野 誠と申します。私は医療業界に20年関わっており、親族が医師をしているため、医療業界に精通しています。
本稿では医療業界注目のベースアップ評価料について解説いたします。

人手不足が深刻な医療業界ですが、その解決策としてベースアップ評価料が新設されましたが、普及が十分に進んでいるとは言い難い状況です。何がネックになっているのか、支援する側としてできることはなにか、中小企業診断士の視点から解説します。
ベースアップ評価料について、当記事では以下の5点について解説していきます。

  1. 制度の説明
  2. 届け出状況
  3. 今後のポイント
  4. 採用定着、生産性向上のための意義
  5. 最後に

※当記事は2025年3月時点での情報をもとに作成しています。最新の情報につきましては、厚労省からの発表をご確認ください。

ベースアップ評価料制度

ベースアップ評価料とは、病院、医院や歯科医院などにおいて賃上げを実施した医療機関に対し、その賃上げ分を診療報酬として国が補填する制度です。 令和6年4月の診療報酬改定で導入されました。
この制度の背景には、医療従事者の平均収入が他産業に比べて低いという問題があります。 医療は国策として重要であるにも関わらず、給与水準が低いことが原因で人材流出が懸念されており、国は予算を投入してでも医療人材を確保しようとしています。
令和6年度は2.5%、令和7年度には2.0%の賃上げを政府目標としています。 この目標は、物価上昇や医療従事者の収入問題を考慮したものです。 ベースアップ評価料は、定期的な給与とは別に、毎月の給与に上乗せする形で支給される手当として扱われます。

届け出状況

ベースアップ評価料の届け出状況には、医療機関の種類によって大きな差があります。 2024年9月時点のデータでは、病院の届け出率が約8割であるのに対し、診療所は約2割、歯科診療所は約1割にとどまっています。 診療所の中でも、有床診療所よりも無床診療所の方が、届け出率が低い傾向にあります。
地域別に見ると、近畿圏では診療所の届け出率が低く、病院の届け出率が高い傾向があります。 福井県は診療所、病院ともに届け出率が非常に高いのが特徴です。 九州圏では、病院、診療所ともに比較的高い届け出率を示しています。 歯科診療所では、中国・四国圏で届け出率が高く、関東圏で低い傾向が見られます。
この背景には、制度の複雑さや申請手続きの煩雑さがありました。診療所では事務スタッフが少なく、院長が多忙なため、届け出そのものが難しいという現状があります。 また、賃上げ率2.5%という目標が要件であるという誤解も、届け出を躊躇させる要因となっています。


出典:神奈川県保険医協会医療政策研究室 2024年10月17日「論考」

今後のポイント

ベースアップ評価料の届け出率を向上に向けて、押さえておきたいポイントがあります。

  • 制度の周知徹底と簡素化: 賃金改善率2.5%が必須ではないことや、諸手当改善での工夫など、制度の柔軟性を周知する必要があります。 厚生労働省のホームページや説明会などを活用し、制度内容を分かりやすく伝えることが重要と考えます。
  • 事務手続きの効率化: 令和7年1月10日付けで新たに事務連絡が示され、「外来・在宅ベースアップ評 価料(Ⅰ)」のみを届け出る場合の届出添付書類が大幅に簡素化されました。基本的には、直近1か月間の初・再診料等の算定回数を調べるだけで、届出 書添付書類の作成が可能です。
  • 事務職員も対象に: 事務職員への賃金改善も評価対象に加えることで、医療機関全体のモチベーション向上につながります。
  • 給付金との連携: ベースアップ評価料の算定を給付金の支給要件とすることで、医療機関の申請を促すことができます。

採用定着、生産性向上のための意義

ベースアップ評価料は、医療従事者における人材の確保と定着に大きく貢献する可能性を秘めています。 賃上げは、従業員のモチベーションを高め、仕事への満足度を向上させる効果があります。 これにより、離職率の低下や生産性向上につながることが期待されます。
特に、若手医師や事務職員など、将来を担う人材の賃上げに資することは、医療従事者全体のモチベーションアップにつながります。 また、ベースアップ評価料の導入をきっかけに、医療機関内のコミュニケーションの活性化に繋げ、働きやすい環境づくりに取り組むことも重要です。

そして、ベースアップ評価料は、医療機関の経営改善にもつながる可能性があります。というのも、本来、医師がする必要がない業務をベースアップでモチベーションアップした医療従事者や、新たに採用できた医療従事者に分配することで、 生産性を向上させ、より多くの患者に貢献することで、収益を増加させることができるためです。
また、 ベースアップ評価料算定機関は、生産性向上に資する設備導入等に関する給付金を18万円受給できます。さらに、ベースアップ評価料の導入をアピールすることで、医療機関のブランディングにつなげ、優秀な人材を引きつける効果も期待できると考えます。言い換えれば、ベースアップ評価料の届出を怠ることで、他医療機関へ医療従事者の流出にもつながりかねないということになります。


出典:厚生労働省 令和6年度 補正予算案の主要施策集

最後に

中小企業診断士の中でも医療に特化した支援をおこなうコンサルタントがおります。具体的に①ベースアップ評価料に対する導入や実績報告のアドバイスや、②魅力的な医療従事者のみを採用定着させる支援、③経営者&医師としての院長の業務の最適化によるクリニック生産性向上が可能です。お困りごとがあれば一度、大阪中小企業診断士会までお問い合わせください。

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